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東京地方裁判所 昭和47年(むのイ)378号 決定

被疑者 ○○○○

右被疑者につき、昭和四七年五月一八日東京地方検察庁検察官原島康広がなした接見等に関する指定処分に対し、弁護人となろうとする弁護士鈴木一郎からその取消を求める準抗告の申立があつたので、次のように決定する。

主文

東京地方検察庁検察官原島康広が昭和四七年五月一八日被疑者になした別紙記載の接見等に関する指定(いわゆる一般的指定)処分は取消す。

理由

一、本件申立の趣旨及び理由は準抗告申立書記載のとおりであるから、これを、ここに引用する。

二、事実取調べの結果によると、被疑者は昭和四七年五月一六日頭書被疑事実により逮捕され、現在大井警察署代用監獄に勾留されている者であるが、申立人は同月二〇日午後六時二〇分ころ同署で、被疑者とその依頼により弁護人となろうとする者として接見を申し入れたところ、同署係員から、被疑者の取調べ等何等捜査の必要がないのに、同月一八日付で検察官から接見に関し別紙記載のような一般的指定がなされているので、検察官の発する具体的指定書を持参しない限り接見はさせられない旨拒否されたことが認められる。

三、さて身体の拘束を受けている被疑者と弁護人又は弁護人となろうとする者とは立会人なくして自由に接見することができ、検察官等が捜査のため必要があり具体的にその日時・場所及び時間を指定した場合に、はじめて指定以外の日時・場所及び時間の接見が禁止されるものであることは刑訴法三九条一、三項・八一条の規定に照らし明らかであるから、あらかじめ一般的に接見を禁止し、具体的な指定処分があつたときはじめて接見ができるというような扱いは、接見が本来原則として自由である旨定めた右法条の趣旨に反し許されないところである。

従つて、検察官の前記一般的指定は違法であり、無効として、申立人は自由に接見をなし得るというべきであるが、代用監獄職員は、検察官の具体的な接見指定書を持参しない限り、依然として接見を拒否するであろうことはみやすい道理であるから、一般的指定処分によつて接見を妨げられている者は、同法三九条三項の処分に準じ、その事実上の拘束力を排除する為、同処分の取消を請求することができるというべきである。

ちなみに、申立人は本申立に、新たな接見の日時等の指定を求めていないので、検察官の処分を取消すだけにとどめる。

よつて本件申立は理由があるので、同法四三二条・四二六条二項により主文のとおり決定する。 (中野武男)

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